秋月電子製 RGBコンバータについて


■ ビデオ信号→アナログRGBコンバータキット

私がパチンコ液晶のテストをする際、最も多くお世話になるのがこのボードと言える。  数多い秋月製のキットの中でも人気が高く、数々の改良を施されながら現在に至っている。 が、おそらく メインデバイスである CXA1621Sの製造中止によるためか、私も正確な時期は把握できていないのだが 2000年には現在の製品である M52042使用の完成品バージョンに世代交代している。
発売当初は何とユニバーサル基板使用のキットで、メインデバイスの V7021(当時)はシュリンクパッケージという ピン間の狭い仕様のため、45度傾けて足を曲げながら実装しなくてはならなかったという恐ろしい現実があったようだ。
その他、発売当初から改良された点を拾い出してみると・・・

1.専用基板になった。
2.メインデバイスが V7021から CXA1621Sになった。
3.同期信号の反転回路が追加された。

1は純粋にありがたかったが、3の方は自社で扱う液晶モニタが同期信号を反転して供給しないといけない仕様のものが多かったという 内部事情も絡んでいるようだ。 他にも改良点はあるかもしれないが、とりあえずはこの辺で。

・   ・   ・   ・

● 主要部品と回路
■ 主要部品 ■
RGBデコーダSONYCXA1621S
ビデオアンプ新日本無線NJM2267
オーディオアンプ各社LM386相当品
電源その他 78L05, 2SC1815 など
■ 備考 ■
調整可能項目:
HUE(色合い)、CHROMA-LEVEL(色の濃さ)、音量
※Y/C分離回路非実装で S映像入力用とすることも可。
※78L05非実装で、5V電源で動作させることも可。
映像入力は、まず 2SC1815によるエミッタフォロアとコイル、コンデンサで構成された Y/C分離回路に入る。 単なる LCトラップとフィルタによる周波数分離で、色復調回路の遅れ時間を補正するためのディレイラインも省略された 簡易型だが、この部分のパーツを実装しないことで S端子入力に対応できるのがこのキットのウリである。
この後は SONY製RGBデコーダIC、CXA1621Sがほとんどの処理を 1チップでこなし、RGB映像信号と ロジックレベルの同期信号が出力される。 RGB映像信号は 75Ωラインがドライブできるよう、NJM2267による バッファアンプが接続されている。

あと、おまけとして同期信号反転回路とオーディオアンプが組み込めるようになっている。 たまたま 同社が販売していた STN液晶モニタの多くが、反転された同期信号(=正極性)を要求するために追加されたようだが、 反転用のトランジスタと抵抗は液晶モニタに付属しているためか、このキットには入っていない。
オーディオアンプの方は、LM386によるゲイン20倍の標準構成で、こちらは部品も付属している。 私は組み立てなかったのだが、 実は出力端子に入れるべき反射防止兼発振防止用の CRが省略されているため、運が悪いと異常発振のトラブルに 見舞われることがあるようだ。 転ばぬ先の杖ということで、LM386の応用回路にもあるように 4〜5Pin間に最初から 0.047〜0.1μFと8〜10Ωの直列回路を入れておくのが安心かも知れない。


■ ビデオ→アナログRGBコンバータユニット(完成品)

通称「RGBコンバータ V2」と呼ばれており、2001年9月現在秋月で購入できるのは、こちらの RGBコンバータのみとなっている。 チップ部品が 既に両面基板上に取り付けられた完成済みの状態で販売されており、電源プラグの極性と映像入力インピーダンス選択用の ジャンパーを設定するだけで使える状態となる。

主要なパーツはチップ部品となり、回路構成も以前のものと大きく変わってしまったが、おそらくこの RGBコンバータが利用される最大の目的であろう「簡単に液晶テレビを製作する」という意味に限れば、かなりの 改良であると言える。 ACアダプターを直接接続できるよう DCジャックも基板上に取り付けられており、ケースに 穴をあけておくだけで OKとなるなど、いたれりつくせり (^^)
少しだけイチャモンを付けておくと、チップ部品を使っている割に基板の端は余分なスペースだらけで、以前のものから 逆に基板は大きくなってしまっている。 完成済みの状態で販売するなら、もう少し小さく作ってくれればウレシイのだが・・・

・   ・   ・   ・

● 主要部品と回路
■ 主要部品 ■
RGBデコーダ三菱M52042
ビデオアンプロームBA7623F
オーディオアンプ東芝TA7368F
電源その他 78M05, 2SC4116, RN1302
■ 備考 ■
調整可能項目:
CONTRAST(映像)、TINT(色あい)、PIX(画質)、音量
※完成品、電源用 2.1φDCジャック実装済み
※ジャンパーで電源プラグの極性および、映像入力の
 インピーダンス 75Ω/High選択可
映像入力は、まず入力インピーダンス設定用ジャンパーに入り、75Ω / Highが選択される。 実はこの部分、22Ωと 47Ωの抵抗を組み合わせた簡易アッテネーターになっており、何故か 75Ωの設定にすると少しゲインが下がるように なっている。 説明書によると、Highを選択しておけば同社で販売しているチューナーユニットを使用する際、本来 チューナーの出力部分に追加しなければいけないバッファを省略できることになっているが、もし バッファをきちんと組んだ上でジャンパーを75Ωにすると、今度はかなりゲインが下がってしまうようだ。 状況によって この部分は見直した方が良いだろう。
さて、この後は 2SC4116によるエミッタフォロアを通して RGBデコーダ M52042に接続されている。 尚、 Y/C分離回路は外付けではないため、S映像入力は使用できない。
M52042からは、RGB映像信号と正極性の同期信号が出力されている。 RGB信号はそのまま出力されるほか、75Ωドライバ BA7623Fによるバッファアンプを通して出力されている。 同期信号は伝統的に負極性(=通常)と正極性(=反転)が 用意されているが、このために抵抗入りトランジスタ RN1302が2個使用されている。 M52042の同期出力が正極性なので、 一段反転して負極性、さらに反転して正極性の同期信号が作られることになるが、この反転回路は反応速度に少し問題があるようで、 同期信号が遅れ気味で出力されてしまうので注意が必要だ。 画面の左側が切れてしまう現象が気になるようなら、 次のページに対策法を記しておくので参考にして欲しい。

最後にオーディオアンプ。 今回は東芝の TA7368Fを使用したものが組み込まれている。 一般的な LM386のアンプに比べて電源の使用効率が良いためか、5V電源で使用されている。 ゲインの方も 100倍の設定になっており、LM386の20倍よりも高くなっている。 ちなみに音量調整は半固定抵抗だが、 これは余分なゲインを落とすためのアッテネーターと割り切り、外部にきちんとツマミのついた音量調整 VRをつけてやろう。


■ 両者の違い、改良点など

現行「ビデオ→アナログRGBコンバータユニット(完成品)」が以前の製品に比べてどう変わったかを拾い出してみた。

●良くなった点
1.完成済みのため、組み立ての手間や失敗のリスクがない。
2.コントラスト調整、画質調整ができるようになった。
3.ACアダプタ接続用の DCジャックが基板上に取り付けられている。

●悪くなった点
4.S映像入力が使えなくなった。
5.色の濃さが調整できなくなった(基板上で固定されているが追加は可能)。
6.映像回路の帯域が狭くなった(大きなモニタでないとわからないが)。
7.基板の外形が大きくなった。
8.同期信号の出力タイミングが遅れ気味のため画面の左が切れる。

あと、活用する上でのヒントとポイントを少しばかり・・・
・JP1は電源スイッチ接続のためにも活用すべし
JP1を設定し、基板上のDCジャックに ACアダプタをつないでテストしていたものを いざ本組みしようとすると、電源スイッチをつなぐ場所がないのに気付く筈だ。
JP1の 3Pinは三端子レギュレータの電源入力なので、一旦 3Pinにつながっているジャンパーをカットして カットしたジャンパーのかわりに電源スイッチを配線しよう。

・音を気にする方は C21を増強しよう
オーディオアンプの出力からスピーカ端子へのコンデンサ C21は 100μFが取り付けられている。 ちなみに 100Hzで約16Ωと、決して無視できないリアクタンス分となるので、音を気にする方は並列に 470μF程度のコンデンサをつないで 増強しよう。

・ビデオ入力とチューナーの切り替えをするなら JP2はオープン
映像入力 Highインピーダンスのまま切り替えスイッチにつなぎ、片方をチューナーへ、もう片方は ピンジャックへ接続。 ピンジャックの端子に直接 75Ωの抵抗を並列接続で OKだ。
2001/10/07 Yutaka Kyotani
2002/10/15 Yutaka Kyotani (メニュー項目追加)

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