パチンコ台中古モニタ活用術「CRカニえもん」編


■CRカニえもん(京楽産業)
液晶パネルNEC製 5.5'TFT NL3224AC35-10
主要処理 IC
入力信号RGB(75Ω),H/V Sync,Clk(Logic),電源(12V)
本体改造なし
追加回路AFC付同期分離・ドットクロック生成回路一式
お勧め度★★☆☆☆
購入店・時期等加斗吉さんご提供
他の同系機種 
備考同期信号はロジックレベル H/V別供給。
さらに、位相が合ったドットクロックが必要。
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実験をされる前に 注意書き をお読み下さい。

■このモニタユニットについて・・・

さてさて、今回のお題目「CR カニえもん」、実は加斗吉さんという方からのご提供品でございます〜。 今回はどうもありがとうございました。  この場を借りてお礼申し上げます m(_O_)m

それでは、早速右上の写真。 台の裏側をご覧いただきましょう。
最近の台は各部のインテリジェントユニット化が進行しているようで、この台もご多分に漏れず「主回路基板」と液晶ユニット内の 「絵柄処理基板」以外にも CPUの使われているユニットが 2つ存在している。 一つは「音声処理」、そしてもう一つが 「ランプ処理」である。 ランプを点滅させたりする位ならあまりメリットはなさそうな気がするのだが、これって ひょっとして「お上の指導」なんだろうか・・・。

写真左側の大きなユニットが主回路基板で、文字通りメインCPUが始動チャッカーのセンサーからの信号を処理して 大当たり判定を行うパチンコ台の中枢部分である。 電源回路やソレノイド、その他サブ基板への I/O関係などが この基板にまとめられている。 CPUは毎度のように ROM内蔵のパチンコ専用 8BitCPU LE2068A-PAが使われており、その他に電源用IC STK755-110が搭載されている他は特に変わった部品はなく、なぜか 74HC273と 74HC244が大量に装着されているのが目立っている。
ま、他の台でランプドライブ用の部品が付いているところが、ラッチとバッファICに変わっただけという感じで、 特に基板上の部品点数が削減されているような感じがしないのは気のせいか。

他のユニットについても少し触れておこう。 まずは音声処理基板だが、OTPROM内蔵 8BitCPU μPD78P083CUが制御用として使われている。 その他には YAMAHA製音源チップ YMZ733-F、音データ用 16MBit ROM MSM531602E、それにオーディオアンプIC LA4485などがめぼしい部品というところか。
ランプ処理の方は、音声処理と同じ μPD78P083CUが使われている他はあまり特殊な部品はなく、純粋にランプドライバーを こちらに移しただけという感じのようだ。

続いて今回の主役、液晶ユニットは NEC製 NL3224AC35-10が使われているのが外側から確認できた。 以前にレポートした 同社の「CR 華観月」で使用されている NL3224AC35-09と同じ系列の液晶で、映像関連回路までがユニットとしてまとめられている。  実はもうデータシートも入手できているので解析に手間取る心配もなさそうだ (^^)
▼液晶の裏蓋
▼絵柄処理基板 1
▲液晶内部を裏側から
▲絵柄処理基板 2

さて、早速液晶ユニットを分解して内部の基板を取り出してみたのが右側の写真だ。 今回はこの液晶パネルの裏面に、絵柄処理のための基板が 二枚構成で重ねて取り付けられている。 まずは右上の写真、後ろ側の基板には、東芝製 TLCS900シリーズCPU TMP95C061BF(Z80上位互換16Bit)、プログラム用 ROM 27C4001、ワーク用 256K RAM W24257、3.3V三端子レギュレータ BA033Tなどが搭載されている。 その他、台の認定検査時のプローブ接続用と思われる 68Pin端子のパターンが二ヶ所基板上に存在しているのが実に印象的。

続いて右下の写真、こちらには axell製グラフィックコントローラー AX51102、絵柄格納用 ROM 27C1602×3、それにグラフィック用として 富士通製 64M SDRAM MB81F641642D、先ほどと同じ256K RAM W24257などが搭載されている。
さらに、液晶パネルとのインターフェース用として、3Chビデオアンプ LT1260(ゲイン調整VR付き)、74HC123使用のパルス幅可変信号発生回路による バックライトの輝度調整機能なども組み込まれており、以前「CR 華観月」のレポートの際にも感じたことだが、このあたりの細かいことにも 手を抜かずにきちんと作られているのは見事だ。

最後に液晶パネルの裏蓋を外した状態の写真をどうぞ。 内部の基板は大きめの一枚モノで、上側がバックライト関連の回路、 下側が映像関連の回路が作り込まれており、フィルムケーブルが右側のサブ基板の方に伸びている。 特殊な部品は 発見できなかったが、他の液晶でもときおり見かける TA8696Fが映像処理用として使用されているのが確認できた。


■付加回路は・・・

先ほども書いたように、この液晶パネル NL3224AC35-10は、以前にレポートした「CR華観月」で使われている NL3224AC35-09と同系列の製品だ。 もちろん共通点も多いのだが、信号コネクタの端子数が 30Pinから 24Pinに減っていることなど、 一部インターフェース仕様が違っている。
データシートから重要と思われる信号について拾い出してみると、H-SYNC、V-SYNC以外に ECLKという ドットクロック信号が必要なことがわかる。 普通、小型の液晶ではドットクロックを液晶パネルの内部で作っているものがほとんどのようだが、 一般的な画像コントローラーではドットクロックも出力されており、自分の出力した画像をドット単位できちんと同期させることを考えると クロックは画像コントローラーから供給するのが有利なのも確かである。 ちなみに、NL3224AC35-09でも外部クロックを供給する端子があるが、 標準状態では内部クロックが有効で、外部からドットクロックを与える場合はピンの設定を変更することになる。
尚、H-SYNC、V-SYNC、ECLKとも動作中は供給し続けなくてはならない。 供給が途切れると液晶の走査が止まり、長時間そのまま放置すると 液晶内部で電気分解が発生してしまうので注意が必要だ。

さて、今回は右のブロック図のような回路を考えてみた。
入力信号が途切れても同期信号を供給し続ける必要があるため、必然的に AFC付き同期分離回路が必要になる。 今回は 503KHz(水平走査周波数の32倍)のセラロックを使用し、安定した水平同期信号が供給できる NJM2257Dを起用した。 また、 垂直側は NE555による無安定発振回路に外部同期をかけることで、連続した垂直同期信号を得ている。
尚、同期分離回路は CR華観月で使った NJM2217Lによるものでも使用可能だ。 その場合、回路図上の HSYNC → VSYNC → それぞれのポイントに接続すれば OKだ。

次に肝心のドットクロック生成回路だが、水平同期信号に同期したものでないと入力信号を取り込むときのタイミングがズレて 画面が左右に揺れる等の影響が出るため、PLLIC 74HC4046によりクロックを作っている。 データシートによると、fCLK = 8MHz、 H-SYNC(1ライン) = 508CLKとのことなので、今回は 12ステージバイナリカウンタ 74HC4040を使用して 512分周し、その結果を入力された H-SYNCと位相比較することにする。
しかし・・・ ここまで来ると、スキャンコンバータのタイミング信号生成回路とあんまり変わらんナ (^^;;

さて、製作例は左下の写真。 下側にピッチ変換基板が装着されているのは、今回フィルムケーブルとコネクターがたまたま入手できたので、 それの実装用だ。 但し 24Pinのものはなかったので、14Pinを二つ購入し、片側を10Pinに裂いた上で連結して使っている。 これは 結構手間と費用がかかるので、体裁や元のパチンコ台で遊ぶことを考えなければ元々付いていたフィルムケーブルに直接リード線をハンダ付けする方が良いかも知れない。

試作回路を組み上げて動作させてみたところ、画面がかなり横長に表示され、本来の映像の左から 2/3位までしか表示されていない現象に見舞われてしまった。 特に PLLが異常動作している様子もないようで、再びデータシートの各項目を検討していたのだが、どうやら fCLK = 8MHz、1ライン 508CLKというのは設定値としてかなり怪しいようだ。 実際の表示エリアを考えると、320/508というのは全体の約63%しかない訳で、これは 経験的なものを考えると多分 1ライン 400CLK前後の値が正解ではないかと思う。
とりあえず、急遽 74HC4040の出力が 11x1xxxxx (=416)を検出するとリセットがかかるよう、ダイオードと抵抗による AND回路を RESET端子に追加、 1ライン 416CLKの設定で使用することとした。

あと、回路的なものを少し補足しておくと、液晶に加える水平同期信号は、同期分離回路から出てきたものではなく、PLLのクロックを分周したものを 波形整形して作っている。 電波状態が悪い TV放送を受信した場合等、同期信号の位相が微妙に変化することがあり、PLLの追従状態によっては 1ドット分「ガクン」と揺れることがあるためだ。 これに関連して、PLLロック時の位相差を外部から調整できるように半固定抵抗を追加し、 水平位置調整として使っている。 ちなみに、波形整形回路は単なる CRによる立ち上がりエッジの微分回路で、後ろに 74HC14を付けただけの簡易型だ (^^;;

最後に一言、PLL 74HC4046はメーカー毎に特性が違うことで有名だが、今回手持ちの PHILIPSとMOTOROLAのもので動作確認後、最近追加で仕入れた FAIRCHILD製と差し替えてみた。 結果は見事玉砕・・・ ということで、タイミング用コンデンサをかなり小さくしないと使えないことが 判明した。 きっと最高発振周波数は低いんだろうなぁ (^^;;
具体的な値は回路図中に記しておくのでどうぞご参考に。

▼ 資料はこちら ▼
基板実装状態拡大イメージ  回路図
※今回は回路図が少々大きくなったので別画面ということで (^^;

■さて、映り具合は・・・

映り具合の方はこんな感じ。 画質の方も高画質でなかなか良好です〜 (^^/~。
画面は 5.5インチということで、まずまず手頃な大きさ、かつ液晶のカラーフィルタも縦ストライプで「高精細仕様」となっている。

今回はこの液晶特有の特性である「ドットクロックが必要」という課題のために大きな外付け回路が必要となってしまったが、 ビデオモニタではなくマイコン応用システムなどの組込用として使用するのであれば、今回追加回路で作っている信号は CRTコントローラーから 引き出せる筈なので、用途によってはあまり気にする必要はないと思われる。
追加回路が大きいせいで今回お勧め度は低めになっているが、画質はかなり良好なのでそのあたりは状況によってご判断いただきたい。

尚、PlayStationから信号を入力中、SYNCラインを 75Ωで終端してみたが、特に画面の乱れもなく安定に動作した。

2001/11/05 Yutaka Kyotani

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