一本行っとく?! フレームバッファ入りSTN液晶! (1 / 3)

 一本行っとく?! フレームバッファ入りSTN液晶!


■ aitendo's電子工房の年末年始特売品で買ったタマに・・・


2008/11月中旬、Aitendo's電子工房のページに「年末年始特売品」なる企画が掲載されたのを見付けた。 年末にかけて 色々と対象商品も追加されて行ったようで、私も期間中 2回ほど注文させていただいたのだが、そんな中で目立たない存在だったのが ★特売品★7.24インチ液晶モジュール[CMW72NS46P] 900円 (税込) なる商品。 7インチ越ワイド液晶なのだが、 残念なことに STN。 安いけれども映り具合はそれなりなので、単品で 900円、RGBコンバータとのセットで 2,680円という価格でありながら、 ヒット商品にはならなかったようである。

さて、そんな中私がこのパネルを購入したのは、2008年12月末のことだった。 以前にも CASIO製 STN液晶パネルは何度かいぢくったことがあり、 このテのパチンコ液晶に使われているパネルの内部構造は、それとなく判っていた。 今回も ちょっとしたひらめき を感じたので、壊したときの予備を含めて 2台ほど発注・・・ を決定した次第。

ということで、早速実物をご覧いただこう。
ちなみに、ひらめいた内容 については、100%とは言えないまでも 80%は当たっていた という感じかな (笑)


▲ ユニットを正面から見る[拡大写真]
▲ ユニットウラ側を見る[拡大写真]


上のイメージが、ユニットの正面とウラ側から見た様子だ。
何やら ものすごく大きくて冗長 なケースに収められており、スペースは余りまくっている。 Aitendo's電子工房に あった説明では RGBコンバータが内部に格納可能 となっていたが、それ以上に 内部はガラガラ の状態だ (^^;

ちなみに多くのパチンコ液晶では、ユニット内またはすぐウラ側に 絵柄処理基板が同居 しているのだが、このユニットでは 液晶パネルのみがケースにマウントされている状態だ。 或いは、絵柄処理基板のユニットが すでに分離された状態 なのかも知れない。 そのため、何というパチンコ台に使われていたのか という情報は判らない。


▲ ユニットを開けて具を取り出し[拡大写真]
▲ さらにサブパネルを分解する[拡大写真]


ユニットを開けて、さらに内部を分解して行く。
フタを開けると、内部にはさらにサブパネルがあり、オモテとウラ、2枚のサブパネルでご本尊が挟まれている。 さらにオモテ側の サブパネルに固定されているネジを外し、ようやく液晶パネル単体の状態になる。

右上のイメージが単体になった液晶パネルとオモテ側のサブパネル。
サブパネルが表示面の保護を兼ねているためか、液晶パネルの表示面はキズ一つなく、キレイな状態だった。


▲ コンポジットビデオ入力表示例 (1)[拡大写真]
▲ コンポジットビデオ入力表示例 (2)[拡大写真]


上のイメージが、コンポジットビデオ入力+RGBコンバータでの表示例。
入力ソースは、例によって MultiR HDD。 接続方法については、このパネルを購入した際の説明書にも書かれているのと、 今回の本題ではない(笑)ので、省略させていただくことにする。

映り具合の方は、やはりというか それなり である。
暗い部分の「黒浮き」が見られるのと、全体的にフォーカスが甘いというか、解像度がスペックほど高くない ような印象を受ける。 それと、明るい部分の連続した同一ライン上には 影が出る というのも STN液晶特有の現象だ。


▲ アナログRGB入力表示例 (1)[拡大写真]
▲ アナログRGB入力表示例 (2)[拡大写真]


こちらは、直接 RGB信号を供給した様子。
この液晶パネルが要求する同期信号は ロジックレベル なので、MultiR HDDのように C-SYNCが映像信号代用 となる機種からの接続には 同期分離回路が必要 となる。 ここでは、C-SYNCのみ RGBコンバータ経由で供給することで済ませたため、少し画面が左側に寄った状態で表示されている。
表示内容としては RGBコンバータを介して接続したものより少し鮮明になったようには感じるが、まだフォーカスが甘い印象が残る。 あと、 RGBコンバータ経由の場合と色調が異なるのは、私が RGBコンバータの色調整をちゃんとしなかったせいかも (^^;

ビデオモニタとしての表示例は 本題ではない ので、このあたりで。
何れにしても、低価格で 7インチ越ワイド液晶モニタが構成できるというのは魅力なので、それほど画質にこだわらない用途であれば 利用価値は高いと思う次第だ。


▲ ウラ蓋を外して内部を見る[拡大写真]
▲ 映像処理を司る主要チップ群[拡大写真]


さて、ここからが本題(笑)。 液晶パネル内部を見てみよう。
まずは左上のイメージから。 液晶パネルのウラ蓋を外して内部を見ると、主要回路は基板一枚にまとめられている様子が 読み取れる。 向かって左上のブロックはバックライトインバータ。 1組の発振回路から 2個の高圧トランスが駆動され、さらに 2本の蛍光管へと接続されている。
中央部分のブロックは、映像処理に関する主要回路が収められているようだ。 メインのチップとしては、CASIOロゴの入った 120Pin QFPのチップ MB87A921A。 富士通製のカスタムチップ? あと、そこから直近には OKIの MSM518221-30Jが 2個。 256KWord×8Bitの画像用フレームメモリだ。 ひらめきはアタリかな (^^)
そして右上のブロックは、液晶のロウ、カラム信号線ドライブ用として必要な電源回路群など。 温度変化に対する補正用と思われる サーミスタも基板外に接続されている。

・  ・  ・  ・

■ 回路・デバイス調査&応用準備などなど・・・


ここまでの情報から、やりたいことができるか検討してみよう。
一時期、秋月電子で販売されていた SHARP製STN液晶 LM32C041 に、外部からワンチップマイコンなどを接続して 色々な図柄を表示させる実験 が流行していたのが記憶に残っている方もおられるかと思う。 LM32C041が完売して久しいが、 今回も願わくばそれに似た実験ができればと考えている。

ポイントは、フレームメモリとして OKIの MSM518221-30Jが 2個使われているということである。
早速 OKIのサイトからデータシートをダウンロードして調べてみると、こんな特徴が書かれている。
  • 512×512×8ビット構成
  • 高速FIFO動作
  • 可変長ディレイビット (600〜262215)
  • 全入出力 TTLコンパチブル
  • 高速サイクルタイム−最小25ns
  • 非同期リード / ライト可能
  • セルフリフレッシュ制御回路内蔵
  • ワード単位でデータの書き込み又は書き込み禁止の制御が可能
  • ワード単位でデータの読み出し又は読み出し禁止の制御が可能
  • 電源 単一 5V±10%
  • パッケージ: 28ピン400milプラスチックSOJ
実は、LM32C041内部にもフレームメモリは使われており、搭載チップは NECの uPD42280である。
ほとんどネタバラ状態だが、せっかくなので、uPD42280にはなくて MSM518221に備わっている機能 を 1つあげておこう。 前出の特徴一覧中で、 ワード単位でデータの書き込み又は書き込み禁止の制御が可能 という項目がそれにあたる。 uPD42280では 書き込みの停止はできるがアドレス更新も停止する という制限があるのだが、MSM518221では 書き込みの停止もダミー書き込みによるアドレス更新のみも可能 という長所を持っている。
ちなみに uPD42280では /WE /WRST WCK の 3つを使って書き込み制御を行うが、MSM518221では WE IE RSTW SWCK の 4つを使って書き込み制御を行う。 すなわち、WE=1、IE=0 という設定で アドレス更新のみの動作 が行えるという大きなメリットがあるのだ。

上記が何を意味するのかを一言で記しておくと・・・
  • uPD42280 (LM32C041)では、1画面全体のデータを用意して書き換えることができる。
    転送速度は対フレームメモリなので事実上制限なしだが、画面の一部分のみを書き換えることは不可能 である。


  • MSM518221 (CMW72NS46P)では、画面上任意の一部分のデータを用意して書き換えることができる。
    転送速度は対フレームメモリなので事実上制限なく、IE端子を制御することで書き換えたくない場所のデータは保持できる という特徴を持つ。
つまり、小規模なワンチップマイコンでも、画面全体のデータをいちどに用意する必要がない ので、楽に色々な図形や文字を重ね合わせることができる ということが言えそうだ。

どう? 試してみたくなったかな? (笑)


それでは、次頁以降で色々と改造や実験を進めて行きたいと思う次第だが、すでに 2009/01/14時点で BBSにもリークしておいたように、 現時点での 実験環境 を貼り付けておくことにする。 ちなみに、 一緒に映っているインターフェースは こちら で作ったものを 暫定的に使ってみた。



2009/01/18 Yutaka Kyotani (暫定公開)
2009/01/25 Yutaka Kyotani (追記)
2009/02/01 Yutaka Kyotani (追記・正式公開)

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